聴覚障害児は、聴児と同様、青年期になると、自己に対する認識や、自己の将来の理想などに対する想いを深め、様々に葛藤していきます。つまり、Eriksonが指摘したアイデンティティの危機に遭遇していきます。
ところで、アイデンティティという用語は、Eriksonが述べた発達過程に応じた自己の帰属意識に関する問題の他に、「職業アイデンティティ」、「ジェンダー・アイデンティティ」、「民族アイデンティティ」など、様々なカテゴリーが存在します。聴覚障害児の場合は、青年期に自己の聴覚障害に対する認識において心理的に動揺したり、聴者・難聴者・ろう者の関係性や帰属意識に思い悩む者が多くあります。そこで、(図1)に示す通り、様々なアイデンティティの帰属問題の中で「聴覚障害者としてのアイデンティティ形成」が問題となってきます。
聴者の青年であれは\社会の大多数が自分と同じ聴者であるため、“聞こえること”と“聞こえないこと”に対する葛藤は生じません。しかし、聴覚障害青年の場合は、周囲の聴者の人々と比較し、自己の在り方について思いを巡らす傾向にあります。聴覚障害青年が自己の障害を正しく認識していくことは、社会で積極的に生きていくためにも非常に重要な事柄であるといえます。しかし、聴覚障害児者は音声言語の聴取理解および表出が困難な傾向にあるので、聴者社会の中では日常のコミュニケーション活動において様々な制限が生じてきます。そして、聴者との会話がスムーズ聴覚障害児は、聴児と同様、青年期になると、自己に対する認識や、自己の将来の理想などに対する想いを深め、様々に葛藤していきます。つまり、Eriksonが指摘したアイデンティティの危機に遭遇していきます。
ところで、アイデンティティという用語は、Eriksonが述べた発達過程に応じた自己の帰属意識に関する問題の他に、「職業アイデンティティ」、「ジェンダー・アイデンティティ」、「民族アイデンティティ」など、様々なカテゴリーが存在します。聴覚障害児の場合は、青年期に自己の聴覚障害に対する認識において心理的に動揺したり、聴者・難聴者・ろう者の関係性や帰属意識に思い悩む者が多くあります。そこで、(図1)に示す通り、様々なアイデンティティの帰属問題の中で「聴覚障害者としてのアイデンティティ形成」が問題となってきます。
聴者の青年であれは\社会の大多数が自分と同じ聴者であるため、“聞こえること”と“聞こえないこと”に対する葛藤は生じません。しかし、聴覚障害青年の場合は、周囲の聴者の人々と比較し、自己の在り方について思いを巡らす傾向にあります。聴覚障害青年が自己の障害を正しく認識していくことは、社会で積極的に生きていくためにも非常に重要な事柄であるといえます。しかし、聴覚障害児者は音声言語の聴取理解および表出が困難な傾向にあるので、聴者社会の中では日常のコミュニケーション活動において様々な制限が生じてきます。そして、聴者との会話がスムーズが、手話によるコミュニケーション場面や、手話を巧みに操る聴覚障害者(成人ろう者など) に出会った時、彼らの人生に転機が訪れます。彼らは、その手話で豊かな自己表現を行う聴覚障害者をモデルとして自我を同一化し、アイデンティティを形成していくことがあります。一方、聴覚活用が困難な聴覚障害青年であっても、手話と出会うことなく、聴者の世界のみで青年期を過ごすことになった場合は、聴者に近づこうと一生懸命に努力し続ける場合があります。この場合、彼らはコミュニケ ションに困難が生じる度に心理的なストレスを感じ、常日頃から心理的に不安定な状態にさらされる傾向にあります。
しかし、両親がろう者であるろう児の場合は、どうでしょうか?青年期に至り、そのろう児が、自己の聴覚障害について悩み、心理的な不安を抱くことがあるにせよ、ろうの両親が自分のモデルとなって、身近に存在してくれていることの意義は大きいといえます。両親から手話による養育を受け、自由に自己を表現できる手話を第一言語として育ち、幼少期から両親が過ごす地域のろう者の集団に触れ、聴者が多数を占める社会の中での生き方を自然に学びながら成長していくことができます。そのため、両親がろう者のろう児は、青年期の聴覚障害に関するアイデンティティ形成において心理的に不安定で、ひどく動揺し、葛藤し続ける者は少ないとされています。
4.聴覚障害児者のアイデンティティ形成